豆腐雑学

1.日本人と豆腐

しょうゆ、みそ、豆腐、揚げ、納豆、食用油・・・・・大豆がらできた食品は、日本の食生活の歴史そのものともいえるくらい、日本人と深いつながりを持っています。古来より、魚以外から動物性タンパク質を摂る機会の少なかった日本人にとって、畑の肉と言われる大豆はそれを補う良質の植物性タンパク質の供給源として、さまざまに加工・利用されてきました。その代表ともいえる食品が豆腐です。近年、生活習慣病(成人病)が増加傾向にある中で、低カロリーかつ高蛋白の優れた健康食として豆腐は日本のみならず世界中で脚光を浴びています。

2.豆腐の起源

大豆の加工商品の中で、豆腐は最も多く食され、栄養価も高く、昔から日本人の食生活には欠かせない食品でした。これほど身近な食品であるにもかかわらず、その起源ははっきりとしていません。しかし多くの日本文化の起源がそうであるように、豆腐も元は中国で作られ、はるばる海を渡って日本にやって来たと考えられています。
中国で初めて豆腐が作られたのは、一説には、今から2千年余も前、漢の時代に准南王劉安(わいなんおうりゅうあん)によって創案されたとも言われています。しかし、実際に文献などに”豆腐”という文字が登場するのは、約1千年前、宋代の初期に書かれた『清異録』という書物が最初で、それ以前の六世紀の農書・料埋書として知られている『斉民要術』にも豆腐の記述はありませんでした。

3.豆腐という文字の由来

日本人からすると、豆腐と納豆は逆のような気もしますが、実はそうではありません。
中国ではヨーグルトのことを「乳腐」と言います。このように中国では「腐」という文字は「くさる」という意味ではなく、「固まる」とか「柔かい固体」を意味します。従って豆腐も、「豆を固めたもの」といったところですね。
中国の豆腐は日本の豆腐と違って、固めで水分が少く、塩気も強いのです。中国では豆腐をそのまま食べることはなく、油と合わせて煮たり、炒めたりします。日本では沖繩の豆腐が、これによく似ています。

4.豆腐の伝来

日本に豆腐が伝えられたのは奈良時代と言われています。
6世紀にはじめて仏教が伝来して以来、7世紀から8世紀の奈良時代にかけて大陸との交流がますます盛んになりました。従って仏教の伝来と豆腐は密接なつながりを持っていたであろうことは容易に想像できます。しかし長い間豆腐は、僧侶や貴族階級など特権階級のごく少数の人達が食していただけでした。日本での、豆腐に関する最古の文献は、1183年の奈良春日大社の記録です。鎌倉時代の後半に書かれた日蓮の書簡には「すり豆腐」という言葉があります。また、南北朝時代から室町時代にかけては、寺院の記録の中に、豆腐に関するものが急激に増えてきます。このことから豆腐は精進料理には無くてはならないものだったわけです。

5.庶民への普及

茶道の広まりとともに神社仏閣の精進料理が一般にも浸透しはじめ、室町時代以降には庶民も目にするようになりました。室町時代も終わり頃には、豆腐売りのことや、奈良豆腐、宇治豆腐などという記述が、『七十一番職人尽歌合』という本に見ることができます。各地に特産の豆腐があったことがしのぱれますが、次第に水のよい京都でさかんに作られるようになりました。江戸時代に入ると、大阪の高津豆腐、江戸の錦豆腐などが知られるようになりましたが、慶長年間(1596~1615)には、京都祗園社境内の二軒茶屋が、祗園豆腐と称する田楽を売り出したところ好評だったため、これ以後、続々と豆腐科理屋が出現しました。中でも滋賀・目川稲荷の田楽、南禅寺の湯豆腐、江戸両国のあわ雪などが有名でした。

6.豆腐百珍

まんがやテレビの「美味しんぼ」の中にも出てきた『豆腐百珍』は、江戸時代の天明2年(1782年)に出版された、大阪の醒狂道人何必醇(すいきょうどうにんかひつじゅん)によって編集された豆腐料理の本です。実に230種以上にも及ぶ豆腐料理が紹介されています。大変売れ行きが良かったらしく当時のベストセラーでしたが、日本料理の古典書としても定評のあるものです。続編もあることから、当時から多様な豆腐料理が作られ、豆腐が庶民の食生活にはなくてはならない食材であったことがわかります。

7.近年の豆腐

このように豆腐は長い年月と伝統に培われて育ってきました。近年では原料は輸入大豆が中心ですが、製造技術の向上によりとても美味しい豆腐ができるようになりました。また最近のグルメブームを反映して上質の国産大豆を使用した豆腐など多様な豆腐に出会うことができます。
日本人にとってはやはり、冷や奴や湯豆腐のようにあるがままの素材を味わうのが最高ですが、淡白で加工しやすいという利点を活かして新しい美味しさを追求していくのも良いのではないでしょうか。

8.奴の語源

ところで皆さん、冷や奴の「奴」とはどういう意味かご存知ですか?
奴とは日本料理における切り方の名称で、大きめの正立方体に切ることを「奴に切る」というような言い方をします。その語源は、江戸時代、武家につかえていた奴さんの衣裳の紋に由来するといわれています。
ちなみに、奴をさらに小さくした立方体(1cm角)を賽(さい)の目、さらにもうひとまわり小さいもの(5mm角)を霰(あられ)と言い、用途によって使い分けます。

9.ワンポイント英語

英語で「豆腐」は何と呼ばれているのでしょうか?
味噌は”miso”または”bean paste”で、醤油は”soy”または”soy sause”ですね。
さて「豆腐」は・・・「豆腐」は”tofu”です。
実はそのままです。
“tofu”は今や世界共通語になりました。

では「油揚げ」はどうなるのでしょうか?
揚げを”age”と書くとエイジ(年齢)のことになってしまいます。
揚げは”fried tofu”のことですが、”fried bean curd”と言います。
厚揚げは”thick fried bean curd”ってとこですか。
“fry”(揚げる)と”fly”(飛ぶ)の発音に注意してくださいね。
でないと
“flied tofu”(飛んだ豆腐)
になってしまいますよ!